A.きちんと準備を整え、状況が悪化したら迷わず下山を判断出来る決断力があるならば、9月中旬ぐらいまでは大丈夫です。
「初心者は9月以降に登るべきではない」というのは良く言われることですが、私は必ずしもそうは思いません。気楽に登れる季節ではありませんが、きちんと準備と下調べをしないとリスクがあるのは、夏の登山でも同じことです。逆説的ではありますが、このサイトを見てくださっているような慎重な方であれば、9月中旬までなら登れるでしょう。
実際には、一日単位の天気で言えば、9月の富士山は夏よりも気候が安定しているぐらいです。
富士山の登山シーズンである7~8月は、夕立や雷雨など一日の内で天気が変りやすいですが、9月は、一日の天候は比較的安定しているのです。
無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、登るなと言われても登りたい人は登ってしまうものです。であれば、9月に安全に登るための条件を示して、それを守って貰った方が建設的であるとの考えから、以下の条件を提示してみたいと思います。
これらを満たせば、初心者でも無事に帰って来られるでしょう。
大げさだと思いますか?
「もっとずっと軽装でも、俺は9月に登れたよ」
「他の人のブログを見ると、そこまで難しくないみたい」
そう言う意見もあるでしょう。でも、それは天気と運が良かっただけです。
黄色信号で道路を渡った人が、
「俺は黄色信号でも渡れたから、危険はないよ」
と言ったら、あなたは富士登山という距離の長い横断歩道を、黄色信号で渡り始めますか?
9月の登山の成否を決めるのは、基本的に天気と装備です。成否とは、登頂の可否ではなく、無事に帰って来られるかです。
先の信号の話で言えば、青信号のときに渡る、ということ。
「そんなの当たり前じゃん」
と思うかも知れませんが、同じ青信号でも、もうすぐ黄色に変わるかも知れない青信号と、まだ時間に余裕がある青信号とでは全然違います。
初心者に難しいのは、その見極めですよね。だからこそ、大げさに思えても最悪の事態、つまり天候の悪化に対処出来る装備と準備を整えることが、9月の登山では前提条件となるのです(7~8月でも当然のことですが、よりシビアという意味で)。
なお、富士山における初雪の平年日は9月14日、初冠雪(積雪)の平年日は9月31日ですが、9月に入ったらいつでも雪が降る可能性があります。
9月下旬には積雪するほどの雪が降る可能性が高いので、初心者の登山は避けるべきです。特に最近の気候変動によって予想外の天候になることもあり得ますので、9月中旬以前でも十分に注意が必要です。
ご来光登山を避けるというのは、真冬に外で一晩を明かすことを想像してもらえば分かっていただけると思います。
また、積雪の有無に関わらず、10月にはもう登山は出来ないものと諦めてください。実際に平地が秋でも富士山では真冬の寒さですから、夏や秋のつもりの軽装備で悪天候に見舞われると命に関わります。そのような最悪の事態にならなくても、凍傷になれば手足の指を失うことになります。
決して脅しではありません。
それだけの覚悟があなたにはありますか?