登山において、落雷から身を守る方法は2つしかありません。
ひとつは山小屋の中に避難すること、もうひとつは雷の発生する可能性のあるときには登らないことです。
雷というと、日本では「落雷に遭って運が悪い」などと天災としての面が強調されますが、実際には正しい知識と判断、行動によって避けられるはずの人災であると言えます。
近年の富士登山ブームにより、登山知識、特に身を守る知識を持たずに観光気分で登る人が多くいます。私が恐れるのは、いつか大きな事故が起こるのではないかということです。事故が起これば後追いで何かしらの規制がされるようになるのでしょうが、起こってからでは遅いのです。正しい知識があれば避けられる事故は、やはり未然に防ぐべきだと私は思います。
正しく恐れることは、決して恥ずかしいことじゃない
落雷のメカニズムは未だに未解明の部分もあるようですが、近年の研究により一昔前の常識は大きく覆されています。これから書くことは、生存の可能性をあげる方法でしかなく、身を守る方法ではありません。屋外で雷から身を守ることは、事実上不可能です。雷に遭遇してからどう対処すべきかを考えるよりも、雷に遭遇しないためにはどうするかを考えることが大切です。
これだけ書いても意に介しないで登ってしまう人はいるでしょう。また、「登山をする以上はなんらかのリスクを伴うものだ」、「雷を恐れていては登山は出来ない」などという人も居るかもしれません。実際にはリスク要素の多い登山だからこそ、少しでもリスクを減らして安全に登山できるように考えるべきなのです。くどいようですが、繰り返します。以下の知識を身につけたからといって、落雷の恐れのあるときでも安全に登れるなどと考えるのは本末転倒です。くれぐれも判断を誤らないように、正しい知識を身につけて登山してください。