では、休憩などのときに腹式呼吸が出来るように、どうやれば腹式呼吸が出来るのか説明しましょう。やり方はとても簡単です。
最初は椅子に座ってやった方が分かりやすいと思うので、適当な椅子に背筋を伸ばして座ってください。背もたれには寄り掛からない方がいいでしょう。左右どちらでも、片方の手のひらをお腹に当てます。おヘソの上ぐらいがいいでしょう。このまま、鼻から「スー」と息を吸い込みます。特にお腹に力を入れる必要はありません。このとき意識するのは、決して肩を動かさないこと、これだけです。
どうでしょうか、お腹が少し膨れるのが、お腹に当てた手で感じられますか?
では、そのまま体の力を抜いてください。力を使わなくても自然に息が吐き出されるはずです。これが腹式呼吸です。
これだけかって?
はい、たったこれだけで腹式呼吸が出来ます。腹式呼吸が難しいと思っている方は、この方法をぜひ試して下さい。ポイントは、肩を動かさないことだけに集中すること。面白いことに、肩を上げ下げして呼吸をすると、息を吸ったときにお腹がへこみ、吐いたときにお腹が出るという腹式呼吸の逆になります。これが、『胸式呼吸(きょうしきこきゅう)』です。肩を動かすのは胸郭を広げようとするときの自然な動作ですが、肩を動かさないと胸郭が広げられないために自然と腹式呼吸になるのです。
もっと簡単なやり方
これでも出来ないという人はおそらく居ないと思いますが、それでも実感出来ない人は、床に仰向けに寝転がって普通に呼吸してみて下さい。お腹に手を当てれば腹式呼吸が出来ていると分かるはずです。これは多分、寝転がっていると自然と肩が動かせない状態になるからだと思います。試しに、寝転がった状態で強引に肩を上下させると、やはり腹式呼吸ではなく胸式呼吸になります。
さらに、こんな実験もしてみると面白いです。先ほどと同じように肩を上げないようにして、息を吸ったときにお腹に力を入れて凹ませてみて下さい。どうですか?ほとんど息が吸えないですよね。肩も上げず、横隔膜も下げないと、息が吸えなくなってしまうのです。このように、人間はこのふたつの動作のどちらかをすることで、肺を引き伸ばし、広げることで呼吸しているのだと実感出来るでしょう。
歩いているときは歩くことに集中しよう
しかし、こんな簡単な腹式呼吸ですが、何か他の事をやっていると意識がそっちに向かって、『肩を動かさない』という約束事を忘れてしまいます。逆に、肩ばかり意識すると、安全に歩くことに意識が向けにくくなります。ですので、登山の行動中は腹式呼吸を特に意識しなくてもOKです。
しかし、トレーニング後、休憩中、山小屋などに意識して腹式呼吸を行うのはもちろん、高山病になったときに慌てないように、『肩を動かさない』ことと、『力を抜けば自然に息が吐き出される』ということだけは覚えておいて下さい。