登山予定にある程度目鼻がついたら今度は具体的にスケジュールを決めていきますが、登山予定日がまだ先であればキッチリ決める必要もありません。予定日が変ることもあるでしょうし、参加者が増えたり減ったりで調整することもあるでしょう。それでもある程度見込みを付けておくと具体的なイメージが湧いてやる気も出てきます。特に公共交通機関を使う方は選択肢が多いですし、予約やチケットの購入が必要であれば早めに取らないと売り切れになる恐れもあります。立てた計画は未完成でも、一応の記録を残して後で確認しやすくしておきましょう。
まず、スケジュールを決めるために最低限必要なもの、「地図」を用意しましょう。観光案内所なんかで配っているようなパンフレットでは必要な情報が得られないので不十分です。本格的な登山では2万5千分の1地形図を使いますが、そこまでは必要ありません。主に5万分の1の縮尺の登山地図と呼ばれるものでOKです。
左の画像のような、昭文社の『山と高原地図』がお薦めです。大きく広げられるB2サイズの一枚地図で、耐水性のある紙で出来ていますから雨や霧でも破れたりしません。地図とは別に各種登山コースの解説もついているので、コース選択の参考にもなります。
登山地図には、パンフレットより詳しい情報として、区間ごとのコースタイムや山小屋、トイレ、救護所、駐車場、路線バスのバス停の名前とバス会社名、標高を示す等高線まで載っています。
これらの情報を元に、目的地からの逆算で計画を立てていくのは、登山に限らず旅行などと一緒です。ツアーに参加する人も、「計画はツアー会社が考えてくれるから」なんて思わずに、必ず自前の地図を用意しましょう。
まだ地図を用意するには早いと思うのでしたら、以下のサイトの登山地図を利用すると良いでしょう。御殿場口だけでなく、プリンスルートも含めた5合目から上の全ての登山道が見られます。プリントアウトして使用する場合は、雨濡れ対策も忘れずに行って下さい。
吉田ルート、須走ルートの載った地図はA2サイズですので、家庭用のプリンターでは印刷範囲を指定してA4用紙に印刷すると良いでしょう。そのまま縮小印刷してしまうと、小さくなり過ぎると思います。また、プリンターをお持ちでない方は、プリントアウトサービスを利用すると便利です。以下のリンク以外にも色々な会社がやっているので検索して探してみて下さい。
どのようにプランを立てる場合でも要になるのは、あなたが下山までにどれだけの時間掛かるのか、つまりコースタイムの予測です。この設定によって予定は大きく変ってきますし、コースタイムの設定が大きく間違っているとその後の予定も大きく狂ってしまうからです。
あなたのコースタイムは、他の山をどれぐらいで歩けているかで大体予測できます。ですから他の山を歩くときも常にコースタイムを意識して時間を測りながら登山することが重要です。といっても、これはコースタイム通りに歩かないといけないということではありません。コースタイムの1.2倍掛かったなら、次は1.2倍の余裕をみる、そういうことです。
実際に計画を立てるときは、登山以外の時間として食事、大休止(景色を眺める時間含む)、高山病対策の時間も考えて予定を組み立てます。そして、登山開始から下山までの時間を、下山目標時刻に合わせてみるのです。一例として、以下のような順番で計画を立てます。
- 以前登った他の山では、ほぼコースタイム通りに歩けた
- 富士山吉田ルートの標準コースタイムは、約9時間半
- この9時間半に、食事、大休止として2時間を加えると、11時間半
- 8月1日に登るとすると、日没時刻は午後7時(これは山頂の日没時刻ですが大まかに分かればOK)
- 日没時刻から逆算した登山開始時刻は7時半
- 高山病対策として5合目で30分の高度馴化時間を取ると、7時には5合目に着きたい
- 車なら7時に駐車出来るように、混雑具合を予想して早めに着くように予定を立てる
- バスを使う場合、始発でも5合目に着くのは8:20(2011年の場合)となっているので、予定と合わないことが分かる
- 予定を変更してタクシーを使うか、下山目標時間を後ろにずらすか、山小屋泊にするかを判断して計画を練り直す
- いずれにしても、バスを使うと日帰りでお鉢巡りをする時間は取れないことが分かる
このように順を追って時間を確認しながら、予定通りにいかないところは変更して、徐々に組み上げていきます。このように具体的にみていくと、自分が標準コースタイムに対してどの程度のペースで歩けるのか分からないと、計画の立てようが無いことが理解出来ると思います。ですから、「事前の練習登山が必要」なのです。
練習登山をせずに、ぶっつけ本番で富士登山に臨む方は、食事、大休止の時間を含めて標準コースタイムの1.5倍はみた方がいいでしょう。実際には2倍以上掛かってしまう人もいるので、これで十分かどうかは分かりません。これで登山経験無しで日帰り登山に挑むことがいかに無謀であるか、時間的な面からもハッキリ分かったはずです。登山経験無しで富士登山に挑む方は、山小屋泊とした方が無難でしょう。