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LastUpdate 2016/04/28

ストック(トレッキング・ポール)の取り扱い方法

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ストックを道具として使うには、備品の意味や取り扱い方、ザックへの取り付け方などの知識も欠かせません。

ザックにストックを取り付ける

かつて、ストックがあまり一般的に使われていなかったころは、ザックにはストックを外付けするための機能を持たないことが普通でした。そのため、移動中はずっと手に持っているか、ザックの中に仕舞いこむ以外に方法がありませんでした。今ではストックも一般的な装備となり、外側に取り付けることを前提にデザインされたザックもラインナップされるようになっています。

ギアループにストックは着けられるの?

ザックの外側には色々と輪っかが着いていて、「どう使うのだろう?」と疑問に思った人も多いでしょう。
これは、登山に使う様々な道具(ギア)を吊り下げたり固定するためのもので、一見すると長いものを取り付けるためと思われるものもあります。しかし、これはストックのためではなく、ピッケルを取り付けるためのものです。

『ピッケル(アイスアックス)』とは雪山登山で使う道具で、氷を削って階段(ステップ)を作ったり、滑落(かつらく)したときに雪面に差し込んで滑り落ちるのを止めたりします。大体20リットル以上のザックには、このピッケルホルダーが付いていることが多く、ザック下部のゴム紐やベルト状のループにT字型のヘッドを通し、上部のループでシャフトを固定するような仕組みになっています(写真オレンジの丸)。

しかし、残念ながらこのピッケルホルダーは、I字型ストックの取り付けには使えません。ピッケルホルダーに取り付けるには、頭がT字型でないと下のループからスルッと抜け落ちてしまうのです。

ストックは、サイドポケットに突っ込む

そこでどうするかというと、ザックのサイドにポケットがあれば、そこにストックを逆さまにしてグリップを入れます。シャフトは、サイドコンプレッションベルトに通して固定します。

『コンプレッションベルト』とは、ザック内の荷物が動いたり偏らないように、締め上げるためのものです。

注意することは、ザックのサイドポケットがメッシュになっていると、充分な強度が無く、破れてしまう恐れがあります。丈夫な生地を使ったポケットであればその心配はないでしょう。

石突やバスケットを覆う巾着袋を被せましょう

また、ストックを逆さまに取り付けるのでバスケットや石突が上を向き、ちょうど人の顔の高さにありますから他人を怪我させる恐れがあります。石突にはゴムキャップを被せ、写真(水色の丸)のように袋で覆うとより安全でしょう。

ちなみに、このような巾着袋は100円ショップで安価に売られています。ペットボトルホルダーを被せてもいいですが、口を絞れる巾着でないと風に飛ばされて失くしたりするので、しっかりしたものを選んでください。

購入時は、ザックとの相性に注意

この他にも、最近のザックは各メーカー独自の方法でストックを取り付けられる機能がつけられている製品が多いので、取り付け方法などの詳細を販売店などで確認してから購入するといいでしょう。
これらの機能が無いザックでは、中に仕舞うしかありません。ねじ締め(スクリュー)式のストックは収縮時でも長めなので、多くの場合ストックの先がザックから飛び出してしまいます。ザックの中に仕舞うしかない場合は、折りたたみ式などの収納時の長さが短いストックを選ぶ必要があるでしょう。

このように、ザックの機能によって選べるストックが限定されてしまうこともあるので、購入の際には留意が必要です。

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その他の取り付け方

このようにピッケルホルダーはあくまでもピッケルを取り付けるためのもので、ストックを取り付けることは想定されていませんが、様々な工夫やアイデアによってストックを取り付ける方法がないわけではありません。しかし、基本的にひとつのループにつき、一本のストックしか取り付け出来ないことに注意してください。

最近は氷壁を登るときなど両手にアイスアックスを持って登るスタイルが一般的になって来ているので、ループも二組備えられているザックもあります。ザックを購入する上で、このような視点から検討されてもいいかも知れません。

不意に外れないように、良く確認を

さて、以下に示した方法のいずれでも、ポイントとなるのは、『いかにストックがずり落ちないようにするか』ということと、シャフトの上下二点を固定して『ストックがブラブラしないように固定する』ということです。
なお、ザックによってループの素材や太さ、造りが違うので、確実に固定できているかよくよくご確認の上ご使用ください。

バスケットの切り欠きに引っ掛ける

バスケットに切り欠きが入ったものは、ザック下部のループを引っ掛けることで、ストックがずり落ちないように固定することが可能です。ただし、ある程度細いひも状のループでないとダメです。ベルト状の太いものでは切り欠きに嵌りにくいので、うまく固定するのは難しいでしょう。

なお、ループは下向きでも構いませんが、上向きにした方がループがシャフト本体に掛かるので、石突だけに掛かる下向きのときよりも安定した状態で固定出来ると思います。

バスケットに穴が開いているタイプでは、穴とループをカラビナ(環状の金属製品)やカラビナ型キーリングなどで連結することで、同様に固定できるでしょう。

上のループにグリップを引っ掛ける

バスケットに切り欠きが入っていなければ、上部のループにグリップの鍔の出っ張りを引っ掛けることでずり落ちないようにする方法もあります。
ただし、このやり方はザックの下にストックの先端がはみ出す場合が多いと思います。ザックの下にはみ出すと、ザックの上げ下ろしの際に地面にぶつかってしまうので、注意が必要です。

逆にバスケットを引っ掛けるようにすると、グリップが地面につくので土で汚れてしまうでしょう。

折りたたみ式やT字型グリップのようなシャフトを短く収納できるタイプであれば、はみ出さずに済むかも知れません。

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長さの合わせ方

ストックの最適な長さは、力が入れやすい長さ

まずは使う前に、縮めていたストックを伸ばして、長さを調節しましょう。この長さによって、使い勝手に影響がありますので、適当にやってはいけません。

ねじ締め(スクリュー)式のストックは、シャフトのジョイント部を回すことで緩めて伸ばし、長さを調節してから締めて固定します。レバーロック式も長さの調節手順は同じです。

Check Point!

長さ調節のやり方


長さの合わせ方
(GIFアニメ)

1 - 一つ目のジョイントを最大に伸ばして固定
まず、三段あるシャフトを繋ぐ二箇所のジョイント部のどちらか一方を緩めて伸ばしていきます。大概は、ここまで伸ばせるという印(「MAX」など)が付いていますので、そこまで伸ばしてしっかり固定してください。
2 - 二つ目のジョイントを緩めて伸ばす
残ったジョイント部を緩めて、こちらもシャフトを引き出しますが、まだ締めこんで固定はしません。自重で伸びない程度に軽く締めこんでください。
3 - ストックを真っ直ぐ(鉛直)に突く
ストックを持って真っ直ぐ立ちます。出来るだけ水平でストックが沈み込まないような硬い地面にストックを立てます。
腕の力を抜いて、肘をヘソの横に並ぶように自然な感じで前に出します。
4 - 腕を押し下げて長さを決める
二の腕はそのまま動かさずに、肘だけを開くようにしてグリップを上から徐々に押していきましょう。そして、前腕を地面に対して水平から5~10°ほどになるまで下げたら止めます。このとき、前腕と二の腕の角度がおよそ105~115°になっていると思います。肘の開きが90~120°のときが最も力を入れやすい角度ですから、実際に使用するときの前後の振り幅を考えても、この角度が最適に近いと言えます。
そのままジョイント部が動かないように手に持って、しっかり締め付けて固定してください。
5 - もう片方は、一本目に合わせる
もう一本も同様の方法で調節します。最初の一本に合わせて二本目を同じに調節してもいいですが、人によっては腕の長さが違うこともあるので、どちらか都合のいいやり方で合わせて下さい。この際、ストックを逆さにすると締めやすいですが、下が土だとグリップが汚れるので、乾いた石の上などに突き立てて行うと良いでしょう。

自分が使いやすい角度に何度でも調節し直そう

「110°とか言われてもややこしい」という方は、肘の角度を90°にする方法でもほぼ同じように調節することが出来ます。その場合は、二の腕は力を抜いて肩から真っ直ぐ下に降ろしましょう。

ではなぜ110°の方法を先に記したのかというと、「90°!直角です」というと、律儀に「90°じゃないとだめなんだ」と思い込んでしまう人もいると思ったからです。110°というと、正確にその角度を出すのは至難の技ですから、自ずと自分が使いやすい角度に合わせようとするものです。

ここに示した角度はあくまでも参考でしかありません。あなたが実際に使ってみて、「もう少し肘を開いた方が使いやすいな」とか、「肘は締めた方が力が入る気がする」など、自分で試しながら微調節してみてください。

私にピッタリの角度が、あなたにも丁度いいとは限らないのです。

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目的に合わせた調節を行う

細い方を活かすか、太い方を活かすか

一般的な三段式のストックには、シャフトを固定するジョイント部が二つあります。さて、どちらをどの程度の長さで調節するのがいいのでしょうか?

多くのストックは、シャフト中間部に長さの目盛がふられていることから、先端部をMAXまで伸ばし、中間部で調節することを推奨しているようです。ですが、ストックをどのように使うか、その目的によって調整する場所を変えることも出来ます。

Check Point!

ジョイント部のどの位置で調節するか

A - ジョイント下部で調節 オススメ!
出来るだけシャフトの太い部分を使うことで、強度を優先する方法。
ストックの扱いに慣れていない方や、ストックを引きつける使い方をする人、体重をかけて使う人向け。
b - ジョイント上部で調節
先端部を軽くして、振りを軽くする方法。
ストックの扱いに慣れて来て、不用意に体重をかけたり、岩の隙間に挟み込んだりしない使い方が出来る人向け。
C - 両方を均等な長さに調節
A,Bの間でバランスをとった方法です。どっちつかずとも言えますね。

初心者は、強度を重視した使い方を

ストックのありがちなトラブルに、「シャフトを曲げて(折って)しまった」というのがあります。

これは、シャフトに対して垂直の力以外をかけないように使っていればあまり起こらないことですが、バランスを崩してとっさに体重が掛かってしまったり、岩の隙間や木の根にストック先端が引っ掛かったままストックを押したり引っ張ったりして、横向きの力が加えられることで曲がってしまうのです。

これは、上記Bの方法である程度は予防することが可能です。
入れ子になったストックのシャフトは、地面に近い先端部が細く、上の段になるほどより太く強度も高くなるので、その太い部分を最大限使うようにすれば折れ曲がったりしにくいのです。これはカメラ用の三脚などと同じで剛性を重視した考え方です。

要するに、ストックを使い慣れない初心者は、シャフトの太い部分(二段目)を最大限伸ばして使う方法をオススメします。

扱いに慣れて来たら、取り回しのしやすさを

一方で、軽い先端部を最大限伸ばして使った方がいいという意見もあります。一般に、全体が同じ重さであれば長い棒の先に重量が掛かるほど重心は先端よりになり、振り回す(コントロールする)のに力が必要です。逆に、重量が手元に来るほど重心も手元に近くなり、バランスがとれて振り回すのに力が少なくて済むようになります。
この使い方は、ある程度ストックに慣れて、押したり引っ掛けたり不用意な使い方をしない自信があるという方に適しています。

これらのどちらも理があり、一長一短だと言えます。どっちが正しいということではなく、あなたの目的に合うかどうかですから、実際に両方試してしっくり来る方を好みで選択すればいいでしょう。

Check Point!

登山はトライ&エラーの繰り返し

ちなみに、管理人は基本的に強度重視の使い方をして来ました。最近は、実際に先端を軽くすることでどれだけ取り回しに影響があるのか、試してみている段階です。色々と条件を変えてみると、「やっぱり先端を軽くすると使いやすいな」と思ったり、「あれ?気のせいだったかな」と思ったり、中々一様にはいかないものです。

このように、私はまず論理的にものごとを考え、実際に登山で試して検証を重ねることで常に最適な方法とは何かを考えながら歩いています。理屈では正しいと思えたことも、現実にはものの役に立たないことも数多くあります。
ですから、このサイトで書かれていることも、これからどんどん書き換えられていく可能性が高いです。「富士さんぽの管理人がこう言っていたから」と鵜呑みにせずに、みなさんも自ら確かめることで経験を培っていただきたいと思います。

また、他のサイトやガイドブック、登山雑誌などでも、必ずしも万人にとって正しいことが書かれているとは限りません。「人に教えられたからその通りにやる」のではなく、自分なりに意味を考え、ときには別の方法を試すこと。それでこそ、知識と技術を応用して難局を乗り切っていける力が身につくのです。

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登りと下りでストックの長さは変えるべきか

ストックの長さは変える必要がない

さて、ストックの長さを合わせて、いざ使う段になると、ひとつの疑問が生まれるはずです。それは、登りと下りで長さが同じでいいのか?ということ。

私の答えは、「ストックの長さは、登りと下りで変える必要がない」です。

ここで、一般的なストックの長さ調節について聞いたことのある人は、「ストックの長さは変える必要がない」と聞くと、「あれ?」と思うかもしれません。

良く聞くのが、「登りでは短く、下りで長く調節しましょう」という意見です。

一見合理的なように思えますが、私がいくつかのサイトを見た限りでは、その長さをどのくらいにすべきか、またどのように決めるべきなのか、その最適な長さを具体的に説明しているのは見たことがありません。
それもそのはずです。斜面の角度は一様でないですし、複数の山を連続的に登る『縦走(じゅうそう)』などでは、一日に登ったり降りたりを何度も繰り返します。そのたびに斜面に合わせて長さを変えるとなったら手間が掛かり過ぎます。つまり、「登りではストックを短くしましょう」と言われても、「どれくらい短く?」という最も肝心な疑問に誰も答えることが出来ないのです。

「山に登る」と言うと行きは常に登り坂、帰りは常に下り坂と思いがちですが、実際には登ったり降りたりの繰り返しであり、そう単純ではないのです。その様な起伏のある山で、「場面ごとに一々長さを変えるべきなのか?」、その疑問に答えたサイトは見たことがありません。
もちろん、傾斜角度が変化しても多少の差であれば腕の角度や握りの位置を調節することによって対応出来るでしょう。ですが、それも自ずと限界があります。急傾斜の登りでストックを短くした後で急傾斜の下りに差し掛かったとしたら、ストックの長さが足りないということになります。では、どうすればいいのでしょうか?

長さを変えずに済む使い方がある

そこで私が提案したいのは、ストックの長さは一度決めたら変えなくてもいいような使い方をすることです。

なぜそんなことが可能なのか、ポイントはストックを突く場所にあります。多くの登山者は、ストックを自分の身体から大きく前に突き出して使っている様子が伺えます。そうすると、登りでは斜面のより高い位置、下りでは斜面のより低い位置にストックを突くことになるために、ストックの長さが合わなくなるのは当然のことでしょう。

では、どうすればいいか?

ポイントは、肘を伸ばさないことです。最も力の出る肘の角度、90~120°を保てば、ストックを突く位置もより身体に近くなり、斜面の高低差の影響を受けにくくなります。
さらに、登りのときは、ストックを身体の前ではなく、足元に突き、後ろに押し出すように使います。そうすると、ストックを短くする必要も無くなるのです。ストックを足元に突けば、自分の足の長さが常に同じであるように、ストックの長さも一定で使えるようになります。

無駄な長さを省ける

さらに付け加えると、ストックを一定の長さで使うことで別のメリットが生まれます。それは、下り斜面でも必要以上に長くする必要がないので、ストックを購入する際、より短い物を選択出来るという事です。短いと何がいいかというと、それは軽さです。最大限伸ばしたときに130cmの物と、100cmの物ではそれだけ重さにも違いが有ります。

実際に、身長173cmの私の場合、使っているストックを最も伸ばしたときの最大長は125cmとなっていますが、そこまで伸ばすとグリップの最上部が胸のあたりまで来ます。さすがにこれでは自由自在にストックを振り回すことは出来ませんね。また、上記の肘の角度(約110°)で調節したところ、グリップの最上部まで106cm強でした。多少は長さを微調整する余裕が欲しいことを考慮しても、110cmの最大長があれば足りるはずです。
つまり、110cmで足りるのに125cmのストックを使うということは、15cm分の無駄な重さを持って登っていることになります。

さて、実際にストックの長さを変えずに使うときには少し使い方の条件が付くので、詳しくはまた後のページで説明します。

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ストラップの機能

ストラップの役割

ストックのグリップには必ず付いているストラップについても考えてみましょう。

元々、スキーのストックから転用された道具であることから、当たり前のように付いているストラップ。実は、登山においては必ずしも必要なものではありません。

スキーの場合には、転倒などでストックから手を離してしまうと、雪の斜面は平滑なために下の方まで落ちていってしまいます。これは単にストックを無くしやすいだけでなく、下の方にいる人に当たって怪我をさせてしまう恐れがあります。ですから、スキーのストックにストラップは必須のものであることは間違いありません。

ですが、登山の場合はどうでしょうか。雪山などは別にして、凸凹した斜面を登る登山では、ストックがどこまでも落ちていくようなことは、あまり多いとは言えないでしょう。

ストラップは握力の補助のため?

では、登山のストックはどのような役割を持たされているのでしょうか?

一般に言われているのは、「ストラップを使うと握力を使わずに済む」というものです。
これは、左の図を見てもらうと分かるように、グリップを強く掴まなくても、手に巻いたストラップを手で押し下げることでストックを地面に押し付けることが出来ます。

強く握らなくて済むということは、握力の消耗を抑えることになりますから、下りで体重を掛けるときや、バランスを崩してとっさに強く握るときのために握力を残しておくことが出来るということです。(但し、ストックを持ち上げるときは、手でグリップを握って持ち上げる必要があります。)

ストラップで手首を痛めやすい

しかし、ストラップに欠点がないわけではありません。

ストラップに手首を通していると、転倒したときにストラップから手首が抜けず、そのまま引っ張られて手首の靭帯を痛めることがあります。
特に、転倒時にストックの上に自分の身体が載ってしまうと、何十キロという重量が手首に掛かることになり、怪我をする危険性がとても高いのです。

このような問題があるために、最近は、ストラップが強く引っ張られたときは自動で緩むように設計された製品も出て来ました。しかし、自分がストックの上に倒れこんだ場合なども必ずうまく外れる保証はありません。

ストラップの長さをうまく調節出来るか

もう一つ問題なのは、ストラップの長さを弛みの無いように最適に調節していなければ、ベルトが緩過ぎてうまく力が伝わらなかったり、逆にきつ過ぎると手がストラップベルトに圧迫されてしまうことです。また、ストラップを間に挟んで握るので、グリップを強くシッカリ握るときには邪魔になります。

ストックを使い慣れない初心者の方が、ストラップの長さを緩くもなく、きつくもないようにピッタリと調節するのは簡単ではないと思うのですが、いかがでしょうか?

attention!

スキーヤーズ・サム

ストックを使っていて転倒した際、身体を支えようと咄嗟に手を突こうとしたときにグリップが手から離れないと親指に負荷が掛かり、『母指捻挫(ぼしねんざ=スキーヤーズ・サム)』という怪我をすることがあります。この怪我は、症状が重いと手術を要することもあります。

スキーであれば転んだときに手を突かないように意識すれば防ぐことが出来ますが、これは下が柔らかい雪だから出来ることであって、岩場など、登山ではそうはいきません。

もちろん、このような怪我はストラップに手首を通していなくても起こりえますが、ストラップに引っ張られることがなければ、そのリスクも低くなります。

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ストラップはいらない?

ストックを握るのに握力は必要ない

このように、ストラップにはメリットだけではなく、デメリットもあることを理解して使うことが大切です。ですが、その一番のメリットと考えられる「握力をあまり使わない」という効果を得るには、必ずストラップが必要なのでしょうか?
実は、必ずしもストラップは必要ないのです。以下の実験で、それを証明してみせましょう。

まず、グリップを軽く握ってください。次に、軽く握った手の形をそのままに、ストックを地面に突き立ててみましょう。どうでしょうか、手の力がグリップを通して地面に伝わりましたか?
元々、ストックを強く握る必要などないのです。軽く握っても、ストックが手から滑り落ちることはありません。そのようにストックのグリップは設計してあるのです。

さて、どうしてこのようなことが可能なのでしょうか?

グリップの形状を良く観察してみてください。グリップの下に刀の鍔(つば)のような出っ張りがありますね。これが力を加えたときに、手からストックが抜けないようにストッパーの役目を果たし、力をこめて握っていなくてもストックを押し出す力(シャフトを下に押す力)をきちんと伝えてくれるのです。

同様に、ストックを持ち上げるときも指に上側の鍔が引っ掛かって、強く握らなくてもストックを持ち上げることが出来ます。これは、ストラップでは得られない効果です。

グリップによっては、滑ってしまう

なお、これはグリップの形状や材質に依存するところがあり、鍔が元々無いつるんとしたグリップの製品や、手を支えるだけの出っ張りになっていなかったり、グリップが硬い材質だと滑ってしまって、このような使い方が出来ない場合があります。
私としては、グリップの材質はゴムで出来ているものが最適であるように思います。手のひらは意外と汗をかきますから、汗の水分でゴムとの摩擦が大きくなって、さらに滑りにくくなります。

必要なければ、取り去ってもいい

このような使い方に気づいてから、私はストラップを使っていません。必要ないので、すでに取っ払ってあります。

ストックの扱いに慣れてくれば、不用意に手から離して下に居る人を怪我させてしまう心配もあまりありませんし、ストラップによる煩わしさもなくなるのです。

「ストックを買ったら、すぐにストラップを取ってしまえ」とまでは言いませんが、実際にストックを使って何度か試した上で「確かに、ストラップはいらないな」と思うようであれば、いっそのこと取り外してしまってもいいでしょう。

ストラップが必要な他のケース

では、ストラップが必要な場面はないのでしょうか?

ひとつあります。

それは、カメラで撮影する場合など、両手をストックから離す必要があるときです。ストラップがあると手首にぶら下げておくことが出来ますが、ストラップがないと、ストックを地面に置くか、何かに立てかけておくしかありません。

Check Point!

金剛杖は富士登山に有効か?

金剛杖は、握力が必要


金剛杖
(at 雲海荘)

ここまで来れば、金剛杖のデメリットもお分かりかと思います。

ただの木の棒である金剛杖には、ストラップベルトも鍔(つば)も無いために、腕の力を杖に伝えるには、杖自体をしっかりと握っていなければなりません。つまり、金剛杖を使うには握力が必要で、それも登山中ずっと握りっぱなしということになると、かなり握力を消耗することが理解できると思います。

登山では長く使われて来た道具ですから相応に役には立つのですが、特に握力の弱い女性などには、金剛杖よりもストックをオススメします。(金剛杖でも、滑り止めのゴム付き軍手などを使うと、摩擦力によっていくらかは握力の助けになります。)

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石突は消耗品

先が丸くなったら交換しないと危険です

ストックの最先端の部分が『石突(いしづき)』です。ドイツ語では『spitze(スピッツェ)』と呼びます。
意外とこの部分にフォーカスする人は少ないですが、登山道とストックの唯一の接点である石突は、ストックを扱う上で最重要ポイントのひとつとなります。

石突は、一般にチップと呼ばれる金属の部品で出来ており、一流メーカーでは『タングステンカーバイド』という超硬合金が使われていますが、低価格の汎用品では恐らくアルミ合金やステンレス鋼が使われているものと思われます。

極めて硬い金属である超硬合金であっても使っているうちに徐々に磨耗していきますから、この先端部のチップ交換がいずれ必要になります。先が丸くなってしまった石突では、岩場などで不意に滑る恐れがあり、危険だからです。

交換出来ない製品もある

汎用品として低価格で売られているストックは、このチップの交換部品が売られていなかったり、そもそも部品交換が出来ないように固定されているなど、元々交換が想定されていないものが多いです。

あなたがストックを長く使うつもりであれば、チップの交換が出来るタイプのストックであるかどうか、必ず確認してから購入しましょう。

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ゴムキャップで自然に優しく

自然に対するインパクトを減らそう

ストックは便利な道具ではありますが、尖っている先端を地面に突き立てて使用するために、自然に対するインパクト(影響)が大きいことが問題視されています。実際に森林限界以下の登山道を歩いていると、ストックで突き刺した痕が穴となって嫌でも目に付きます。

元々柔らかい土はもとより、踏み固められた地面であっても先の尖った石突では簡単に掘り返されて、土が流されやすくなります。この状態で雨が降ると、表土が流失して登山道が荒れる原因となります。それを可能な限り防ぐために使われるのが、石突の上に被せるゴムキャップです(製品によっては、石突自体を先端がゴムの部品に交換するものもあります)。

このゴムキャップを使うことで、無用な掘り返しや穿孔(せんこう)を少しでも減らす努力が登山者には暗黙の了解として義務付けられています。

板敷きの床にも突き刺さないように

また、石突は、木の根っこや丸太の土留め、木道(もくどう)、ウッドデッキ、山小屋などの板敷きの床を容易に傷つけます。そのような場所にはストックを突かない、使わないようにして、最低限ゴムキャップを被せてダメージを与えないように配慮しましょう。

Check Point!

森林限界上でゴムキャップは不要

状況に応じて外しましょう

一方、森林限界を超えて灌木や高山植物も無い標高まで登ってくると、地面も土ではなく岩と砂利になって来ます。

このような場所では石突で突いても自然に対するインパクトは比較的小さいために、必ずしもゴムキャップは必須ではありません。いえ、むしろゴムキャップを外して、金属製の石突でグリップを得た方が安全です。

また、ゴムキャップも消耗品であり、特に岩場や砂利の地面では想像以上に磨耗しますので、ゴムキャップは外して、無くさないように仕舞っておくといいでしょう。

左の写真は管理人が使っているストックですが、ゴムキャップを外し忘れていたために富士山の山頂で気づいたときにはこのように穴が開いてしまっていました。
もちろん、これ以前にもこのストックは使っていたわけで多少は消耗していたのでしょうが、私は長距離を歩くとき以外はストックを使わないので、まだ10回も使っていない状態であるにも係わらず都合2回目の富士登山でこのようになったのです。

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ゴムキャップを無くさない工夫

外れやすいゴムキャップ対策

しかし、このゴムキャップにはひとつ問題があります。

ゴムキャップは、状況に合わせて付け外しがしやすいように脱着式になっているのですが、それが災いして、つけ方が悪かったり緩んでいたりすると、気がつかないうちに外れて無くしてしまうのです。

実際に富士山の登山道では、土に埋まった無数のゴムキャップを見ることが出来ます。

これは単にゴムキャップを無くして不便なだけでなく、山にゴミを残すことになります。本来、しっかり取り付けられていれば簡単には外れないと思うのですが、さらにあるものを使うとゴムキャップの脱落を防止することが出来ます。

ガスホースを留める、アレ

そのあるものとは、ガス器具のホースをガス栓に固定する『ガスクリップバンド 』です(但し、外れたり不具合があっても管理人は責任を持てません)。このガスクリップを使って、ゴムキャップを差込口の根元で締め付けるのです。

ガスクリップは、規格が決まっているので、一般的なサイズのもので『外径19mm用(内径13mm用)』と『外径15mm用(内径9mm用)』となっています。
私のストックでは外径19mmのものを使っていますが、必ずご自身のストックでサイズを測って選んでください。

サイズを選ぶときの注意点として、ストックに装着前のゴムキャップで測るのではなく、ストックに装着した状態の直径を測ってください。
ゴムキャップは、石突に差し込むと少し広がりますから、お間違えの無い様に。また、サビが出ないように、塗装されたものがいいでしょう。

Check Point!

ガスクリップの実測サイズ

参考に、写真の商品([KGB-2]三栄水栓製作所(製造)・川口工業(販売))のバンド部分実測値(外径19mm用)を載せておきます。最大23mmですが、そこまで広げて使うのはオススメしません。21mmぐらいの外径までに留めておいた方がいいと思います。

  • 通常時のクリップ直径=19mm
  • 最大に広げたときの直径=23mm

さらにコレ

サイズが合わない、またはガスクリップではまだ不安だという方は、『ホースクランプ 』をオススメします。

こちらは金属製のバンドをキリキリと巻き上げることで無段階に締め上げるので、より強く固定することが出来ます。写真のものは締付範囲13mm-23mmの製品で、これで問題なく装着出来ました。

ただし、構造上、巻き上げて余ったバンド部分がはみ出すので、ズボンの裾などが絡むと生地が破れたり引っ掛かって転倒する恐れもあります。余った先端を養生テープなどで巻いて覆ってしまうといいでしょう。

ガスクリップもつまみ部分が出っ張りますが、つまみがプラスチック製で角に丸みがついたものを選べば、引っ掛ける心配も少ないでしょう。ガスクリップで間に合うのであれば、そちらを使うことをオススメします。

巻き上げは、10円玉で

クランプの巻き上げには特別な道具は必要ありません。マイナスドライバーでなくてもコイン(10円玉)で出来るので、登山中の脱着もさほどの手間無く行えます。
こちらも、サビ対策としてステンレス製のものを選ぶといいでしょう。鉄かステンレスか分からない場合は、磁石を当ててみるといいでしょう。磁石が付くのが鉄製です。

どちらもホームセンターで売っており、ガスクリップはガスコンロのコーナー。ホースクランプは、結束バンドなどの接続用品のコーナーか、水道用ホースのコーナーを探せばあると思います。

なお、クリップやクランプをストックに装着したままにしていると締め付けが甘くなるので、登山から帰ったらゴムキャップから外すか、緩めておくようにしましょう。

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バスケットの役割

バスケットとは、ストックの先端部分についた傘のような形状の部品のことです。

スキー用のストックには、柔らかい雪に深く沈み込んでしまうのを防ぐ目的でつけられています。
棒状のストックが『点』で地面に接するために一点に圧力が集中するのに対し、かんじきやスノーシューと同じように『面』で抵抗を生み出し、圧力を分散して支えるものです。

元々雪の上で使うことを目的としたスキー用のストックから転用されたために、登山用のストックにも当然のようにつけられています。しかし、積雪期以外の登山では、このバスケットにどのような意味があるのでしょうか。

正直に言えば、大した意味はありません。

え?

「それはお前の個人的な意見だろう」って?

夏の登山にバスケットは不要

いえいえ、ストックにバスケットは必須のものではないのです。その証拠に、同じように富士登山に使われる金剛杖には、バスケットや、バスケットと同様な役割を果たすものがついていません。もしも登山用の杖にバスケットが「必ず必要」であるならば、金剛杖にもついているはずではありませんか?

そもそも、ストックでも最近出ているモデルでは、バスケットはほとんど慰め程度の小さいものに変わって来ています。本当に必要なものであれば、小さくなんてしませんよね。

では、一般に言われているバスケットの効果とされるものを改めて確認してみましょう。

Check Point!

一般に言われているバスケットの役割

  • 雪はもちろん、土や泥、砂でも沈み込みにくい
  • 岩の隙間に先端が挟まらないようにし、折損を防止する

まず、実際に雪面に使用する場合の効果ですが、実は雪のときはオプションで別に用意されているもっと大き目のバスケットを使うのが普通です。つまり、夏の登山用として売られているストックに最初からついているバスケットでは、雪面に使うには役者不足なんですね。

雪よりも固く抵抗力のある土や砂であれば小さいバスケットでもいいのかとも思いますが、そもそも、土や泥、砂の地面であれば、雪に棒を刺したときのように際限なく沈んでいくことはまずありません。つまり、この目的ではバスケットの効果は極めて限定的であり、無くても大してデメリットはないということです。

隙間に挟まれないためのバスケット

次に、バスケットには岩の割れ目や木の根っこの間など、細い隙間にストックが挟まってしまうトラブルを防止する効果があるとされています。

左の図のように、ストックの先端が引っ掛かったまま横方向(前後左右)に押したり引いたりすると、梃子の原理により、軽い力であってもシャフトが曲がったり、折れたりすることがあります。そういう意味では、バスケットには一定の効果が期待出来るでしょう。

確かに、うっかりするとそういう事態も起こり得ます。ですが、これは慎重さや集中力が維持できる人なら容易に避け得ることです。あるいは、そういうシチュエーションではストックを一時的に使わずに通過するという選択も可能です。

バスケットの部品自体は二つあわせても20gあるかどうかですが、無駄な重量は1gたりとも持つべきでないという山の不文律からすると、必要ないと思えたら取り外してしまってもいいでしょう。
特に、長い棒の先に掛かる重さは手元の場合よりも取り回しに対する影響がより大きいですから、登山中に何百回、いえ何千回と振るストックの軽量化としても疎かには出来ません。

一般的にバスケットはネジ込み式で取り付けてあるだけなので、雑巾やペンチで掴んで回せば簡単に外すことが出来ます。

Check Point!

富士山でバスケットは不要

改めて、富士山でストックを使うときにバスケットは必要でしょうか?

結論から言うと、富士山にバスケットは必要ありません。実際に私のストックは、すでにバスケットを取り外してあります。

特に、多くの登山者で込み合う富士山では、バスケットのようなわずかな出っ張りでも、人とすれ違うときには何かと邪魔に感じるものです。
ザックに括り付けるときにも、バスケットは邪魔になります。山小屋に宿泊する予定の方は、特にそうかも知れません。

中には、「メーカーが必要だとして取り付けて売っているものなのだから、必ず必要なものなのだろう」と考える人もいるかも知れません。そのような人は、どうぞご自由になさってください。バスケットの有無は、取り立てて重要な問題ではありませんので。

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