『Stock(ストック)』とはドイツ語で「杖」を意味し、英語では『Stick(ステッキ)』となりますが、とくに登山に使う杖は『TrekkingPole(トレッキング・ポール)』と呼ばれます。英語とドイツ語の呼び方の違いだけで、ようはアウトドア用の杖であることに違いはありません。
形状はスキーで使うストックと同じですが、携帯しやすいように伸縮が可能になっているところが違います。
日本の登山界は、歴史的にヨーロッパの影響を強く受けて来たことから一昔前はストックの呼び名が一般的でしたが、スキー用のストックと紛らわしいためか、最近はトレッキング・ポールの名称で認知されるようになって来たようです。
長旅の友
ストック自体は近年になってからのものですが、登山に使う杖の歴史は古く、山登りがレジャーではなく旅の一行程であった時代から樫の木などの丈夫な木の棒を歩行の補助に使ったのが始まりと思われます。
ストックの話をする前に、まず大前提として、富士登山にストックが必要かどうかを考えてみましょう。
そもそも、富士山に限らず登山自体にストックは必須の装備なのでしょうか?
いいえ、必ずしも必要ではありません。それはなぜか、まずはストックのメリット、デメリットをあげてみます。
足腰がシッカリした人が短距離を歩く分には必要なし
私の経験から言えば、最初に登山を始めた時は当然ながら初心者向けの距離の短い山からスタートしました。ストックは使わなかったというより、そういうものがあること自体知らなかったように思います。でも、知っていたとしても購入しなかったかもしれません。
ストックを初めて使ったのは、登山を始めて数年経った後の富士登山でした。このときは明確に、「長い距離(時間)を歩くから必要だろう」という意識がありました。そして、その後また数年は富士山に登ることも無く、さほど長い距離の登山もしなかったので、ストックを登山に持ち出すことは一切ありませんでした。
そして、このサイトを始めた年に富士山以外でも距離の長い登山で何度か使うようになりましたが、今では富士山を麓(1合目下など)から登るときでも使わずに済ませることが多くなりました。
登山では、ストック無しでもシッカリ歩けることが基本
なぜ今は使わない方向になったかというと、ストックはあくまでも『補助』のためのものでしかないとの思いからです。つまりストックありきではないので、ストックを用意して登っているときでも、必要性を感じない限りは使いません。
今では富士山の距離や難易度、あるいは自分の体力が良く理解出来ているので、ストックを使うまでも無いということになったわけです。
こうなると、使う可能性が低い登山にストックを持っていくのは、重さの分だけ無駄だということになります。逆に積極的に使う気が無いのにストックを準備する理由としては、膝痛などを抱える人が『お守り』代わりとして念のために持っていくケースです。
ここで重要なのが、自分にとってストックが必要な道具であるかを判断出来るだけの経験があるかどうかです。その経験を身につけるためにも、登山初心者が富士山に登る前の練習登山を行う際は、ストックを持っていくにしても、まずはストックを使わずに登ってみることをお勧めします。
「でも、折角買ったのだから、使わないと勿体無い」
そう思う人もいるでしょうが、それは、「道具を使っているのはではなく、道具に使われている」ということです。
無駄かどうかではなく、必要かどうかで判断してください。