11月20日、積雪によりすでにアイスバーンと化している富士山の9合目付近で、6人パーティで登っていた65歳の男性(当初発表では64歳)が滑落。同じパーティで登っていた18歳男子学生も安全な場所へ移動中に滑落し、「骨折して動けない」と自ら110番通報しました。男子学生はその後、さらに滑落。7合目で発見されましたが心肺停止の状態で、その後死亡が確認されました。
翌21日になり、吉田ルート下山道7合目公衆トイレ南東の沢で最初に滑落した男性が発見されましたが、心肺停止の状態であり、後に死亡が確認されました。
男子大学生は救えなかったか
6人中2人の死亡者を出したこのパーティは、日本山岳会広島支部が募集したもので、65歳の男性は約40年の登山歴。男子学生も同会広島支部の学生クラブメンバーで、大学の山岳部員だったという。
悔やまれるのは、男子学生が1回目に滑落したときは骨折はしていたものの自分で通報できる状態であったのに、その後、何らかの理由で再度滑落したことである。なぜ2度目の滑落をしてしまったのか。このような場合を想定しての訓練、装備、他の隊員との意識の共有が出来ていたのか。「骨折したようで動けない」と自分で通報していることから、滑落停止地点から自ら動こうとしたとは考えづらいとはいえ、あくまで憶測と可能性だけの話ではあるが、最悪の事態は避け得たかも知れないと思うと悲しい。
事故報告書の公開を望む
日本山岳会広島支部のサイトでは、事故報告書がパスワードが必要な会員ページ内にあり、会員以外は閲覧できない。会報は会員以外にも公開されているが、当該遭難事故については簡単な経過が書かれているだけで、事故原因などは読み取れない。
事故報告書と、山岳会としてとった行動、今後に向けた対策などは、他の登山者への啓発の意味も込めて広く公開していただけると良いのですが。
やはり、考えが甘かったのではないか
毎日新聞広島地方版では、日本山岳会広島支部の副支部長が報道陣の取材に対応したことが書かれている。それによると、「学生の登山技術向上を図る取り組みの一環」として富士山に登ったとあるが、厳冬期の富士山は、未熟練者が登る山ではないと思う。山頂付近に到達していたから「無理な計画ではなかった」とも言っているが、登山は結果が全てである。技術向上のためなのであれば、「ひとつのミスが命取り」となる富士山を選ぶべきではなかったと思う。