12月1日午前11時15分ごろ、御殿場口9.5合目の岩場で事故が発生。男性三人、女性二人のグループで、女性一人は事故前に体調不良で単独下山中、残り四人がロープに繋がった状態で300m以上を滑落しました。
女性は骨盤骨折の重傷ながら、他の登山者の助けを借りて自力下山。もう一人の男性はヘリコプターで救助。一人は、意識不明の重体。残りの一人は意識はあるものの重症で、ヘリコプターでの救助を待っていました。
富士山で起きた遭難事故をまとめています。
12月1日午前11時15分ごろ、御殿場口9.5合目の岩場で事故が発生。男性三人、女性二人のグループで、女性一人は事故前に体調不良で単独下山中、残り四人がロープに繋がった状態で300m以上を滑落しました。
女性は骨盤骨折の重傷ながら、他の登山者の助けを借りて自力下山。もう一人の男性はヘリコプターで救助。一人は、意識不明の重体。残りの一人は意識はあるものの重症で、ヘリコプターでの救助を待っていました。
朝から再開された救助、捜索活動により、2名の死亡が確認されました。
昨日の時点で行方不明とされていた1名は、ヘリコプターで吊り下げて救助する途中で遭難者を落下させてしまうという事故により見失っていたことが公表されました。
この遭難事故を起こしたグループは、山岳会に所属しています。通常、山岳会主催の山行(さんこう)で事故を起こすと、後日、検証の報告書を出すのが通例です。
この山岳会も、いずれ詳しいレポートを公表されるものと思います。
余計なお世話ですが、時系列から整理してみました。
現在出ている情報で最も詳しい、救助グループの情報を元に、その目線で記載しています。("「」"内は、下記ブログからの引用です)
事故発生日:12月1日(日)/天気:晴れ | |||
---|---|---|---|
時刻 | 救助グループ (一般登山者) | 遭難グループ | 静岡県警 (静岡市消防航空隊) |
時刻不明 | 5名スタート | ||
AM4:00 | 2名太郎坊洞門スタート | ||
AM8:50 | 七合目、日の出館 | 七合九勺、赤岩八合館 | |
AM10:00 | 八合目(七合九勺?) | 目視出来ず | |
AM10:20 | 八合目、見晴館(廃屋) | 九十九折りの下側 | |
登り始めてすぐ | 下山者とすれ違う 後発2名と合流 | 女性1名下山(「後で分かったことですが、気分が悪くなったようです」) | |
先行組の直下 | 九合五勺 バケツ掘り | ||
AM11:00 | 先行遭難パーティを追い越す | 足元にザイル(登山ロープ) | |
10~15分後 | 「何気なく振り返った時は、4名がザイルでつながれた状態で滑落して行くのを目撃」 | ||
その場で即 | 警察に連絡 | 「安全を確保して山頂から電話を下さい」 | |
AM11:45~50 | 山頂到着 警察に連絡、状況説明 | ||
富士宮口ブル道から下山開始 | |||
AM12:40ごろ | 4名八合目現場到着 他の登山者1名合流 | 滑落4名+途中下山の1名 「1名は少し上で心肺停止状態で残りの3名はかたまって横たわり動けない状態でした。でも意識はあり彼らと会話することが出来ました。」 | |
救助活動 足が折れた様子の黄色いウェアの男性をブリザードバックに入れるなど | |||
PM1:00近く | 警察に連絡 | 「3~4時間で富士宮から救助隊が行きます」 「場所が8合目ですからもう少し時間がかかるかもしれない」 「ことによると二次災害の危険性もあるので明日になるかも知れない」 | |
救助用のヘリが何度も接近するも強風とガスの視界不良のため救助出来ず | |||
警察に連絡 「我々自身も危険と判断して警察に電話」 | 「皆さん、大変だと思いますが、引き上げてください」 | ||
警察に連絡 「残しておく彼らのためにテントをヘリで落としてくれ」 | 「気流とガスの関係で無理だ」 | ||
女性2名を連れ、下山開始 遭難現場には、男性3名「黄色いウエアーの方は有難うございましたと言ってくれました」 | |||
PM2:30ごろ? | 男性1名ヘリで救助 | ||
PM4:00ごろ | 男性1名ヘリで救助中に落下 行方を見失い、捜索を断念 | ||
下山途中 | 警察に連絡 「せめて宝永山まで迎えに来てくれないか」 | 「全ての人が救助に出払って対応できる人はいない」 | |
PM8:00 | 御殿場口新五合目到着 | 待っていた救急車に女性を乗せる | |
事故翌日:12月2日(月)/天気:晴れ | |||
午前中 | 心配停止の男性収容 行方不明の男性を発見、収容 二人とも死亡を確認 |
なぜロープで結び合っていたのか?
遭難したのは、男性3人、女性1人のグループで、アンザイレンしていたために、1人の滑落で全員が巻き込まれたようです。
『アンザイレン』とは、ロープで互いを繋いで、誰かが転倒、滑落しても他のメンバーが食い止めるという、主に冬山で使われる安全確保の技法のひとつです。
アンザイレンの中でも『コンテニュアス(同時登攀)』という方法は繋ぎあった全員が同時に動くやり方で、ベテラン同士が組むときや比較的滑落の危険性の少ない場所に使われる方法です。同時に動くので、いつ誰が滑落するのか「その瞬間」に目を離している可能性があり、とっさの反応速度や反射神経、経験に基づく的確な判断力など、極めて高度な技術が求められます。
もうひとつ、『スタカット(隔時登攀)』という方法があり、これは一人が動いているときはもう片方が止まって安全を確保(ビレイ)し、尺取虫のように交互に歩行を繰り返します。
スタカットは、比較的技術の劣る人を登山ガイドなどがリードして登るときに用いられます。同時に動くことが無く、止まっている方は相手の歩く様子を見ているので、万が一転倒などしてもすぐに反応が出来、尚且つ的確な行動を起こせるので比較的安全なやり方と言えます。
冬期富士登山でアンザイレンは正しいのか?
今回の遭難事故はコンティニュアスをしていたのでしょうが、富士山は雪山というよりも氷の山です。このような「氷の滑り台」とも言われる山でひとたび転倒したら、滑落を止めるすべはありません。つまり、アンザイレンしていても他の人の滑落を食い止めるすべはなく、全員がまとめて落ちていくだけで却って全滅する危険があるのです。
図らずも、その通りの結果になってしまいました。それでも300m以上の滑落で生存者が2名いたことは、奇跡に近いと言えるでしょう。
事故発生日、12月1日の日の入り時刻は、16時45分。翌日、12月2日の日の出時刻は、6時24分。
遭難現場は南東斜面のため、富士山の影に入った時間はさらに早かったでしょう。
この遭難事故に遭遇し、救助活動をされた一般登山者の方が記録を残されています。