富士山頂の迷い犬保護 飼い主?名乗り出る…激やせも元気
[ 2013年7月30日 06:00 ]
富士山頂でやせ細った姿がたびたび目撃され、インターネット上で話題になっていた迷い犬が29日、保護された。静岡県御殿場保健所が民間団体からの要請を受けて捕獲を目指していた。民間団体の間では「富士男」と呼ばれているという雄犬は、あばら骨が見えるほどやせ細っているが元気だといい、同保健所は、「生還できてよかった」と胸をなでおろした。
犬の保護を目指して御殿場保健所と協力して活動していた動物保護団体「RJAV被災動物ネットワーク」のブログによると、29日午前3時5分、山頂付近にいた支持者から同団体に、「設置した捕獲器の中に犬が入った」と電話があった。
犬は迎えに登ってきたブルドーザーに、捕獲器に入ったまま乗せられて5合目まで下山。車に乗り換え、ふもとの動物病院に運ばれた。
保健所によると、犬は推定5~7歳の雄で雑種。体長約1メートルで、首輪はない。非常にやせた状態だが、重い健康障害はなく元気。人慣れしており落ち着いた様子という。
登山客からもらうエサで食いつないでいたとみられる。捕獲器には、空揚げなどが入れられており、犬は数日前から中をのぞき込むなど、興味を示していたという。
保健所によると、犬が山頂にたどり着いた経緯は不明だが「5合目まで車で飼い主に連れられてきて、登山中にはぐれた可能性が高い」という。保護を受けこの日「引き取りたい」との申し出が殺到。また、飼い主とみられる人がRJAVに「うちの犬かもしれない」と名乗り出た。確認されれば、飼い主の元に戻る。
犬は今月1日の山開き直後から登山客による目撃情報が相次いでおり、ブログやツイッターなどで情報が拡散し話題となっていた。同15日に、RJAVが「何とかならないか」と相談を受けたことで救出計画が始動。関係自治体に協力を要請していた。
しかし、先月22日の世界遺産認定後、8合目から上が文科省の管轄になったことや、犬が県境をまたいで移動することなど多くの問題に直面し救出活動は難航。そんな中、今月23日に御殿場保健所が協力を申し出、翌24日に捕獲器を山頂付近に設置していた。
県内の捨て犬や迷い犬を多く保護する同保健所も「まさか、富士山のてっぺんで迷い犬が出るとは想定外。助けられて安心のひと言」と苦笑い。降雪が始まる8月下旬になると、捕獲器の設置や犬の体温維持などが難しくなり、今回のような救助は困難になると話し、「同じことが起こらないよう飼い主への啓発に努めたい」としている。
【迷い犬アラカルト】
▼崖っ縁犬 2006年11月、徳島市の眉山の崖で身動きがとれなくなっていた犬が見つかり3日間かけ救助。救助活動の様子がテレビで生中継されるなど話題に。救助後は県内の女性に引き取られた後、現在は徳島県動物愛護管理センターで元気に暮らしている
▼現代のハチ公 11年9月、千葉県我孫子市の病院にオスの柴犬が迷い込む。何度追い出しても戻ってきたため病院が保護し飼い主を捜したところ、この病院に入院していた患者で、当時は別の病院に転院していた男性と判明。のち無事に再会
▼竜巻から生還 12年5月、巨大竜巻の被害を受けた茨城県つくば市で飼われていた犬が、竜巻に巻き込まれて行方不明に。しかし2日後、飼い主の家の約100メートル先に戻ってきていたところを飼い主が保護