さらに大事なことは、足を踏み込む力をコントロールすることです。滑りやすいと、つい足に力が入りますが、それでは却って砂を踏み崩してしまいます。むしろ、踏み出す足は「そっと」置くだけ。後ろ足は強く蹴り出さずに、「スッと」持ち上げるだけにします。
しかし、そうすると勢いをつけて身体を持ち上げる歩き方が出来なくなります。そのような勢いをつけて重心移動と同時に前進を行う歩き方を『動歩行(どうほこう)』と呼びますが、動歩行は速く歩ける代わりに筋肉の力に頼るので、疲労も早くなります。
一方、重心を先に前足に移動させてから重心の抜けた後ろ足を前に進める歩き方を『静歩行(せいほこう)』と言います。静歩行では、重心移動を両足が地面についた状態で行うので、極めて安定感に優れた歩き方になります。
一般に、普段我々が行っている歩き方は動歩行ですが、特に滑りやすい場所では静歩行の方が、確実に歩を進めることが出来るのです。
膝の屈伸運動で登る
左の図では分かりやすいように階段を登っていますが、スロープの斜面でも同じことです。注意ごとも細かく書いていますが、これは膝や腰を痛めない為の基本的な約束事であり、実際の動作は決して複雑ではありません。
次の3ステップだけ覚えれば、あとはこの繰り返しです。
- 前足を段の上に載せる
- 前足に体重を載せる
- 前足の膝を伸ばす(勢いはつけない)
このように、難所では体力で押し切るよりも頭を使うことが大切です。頭を使うとは、「より楽な方法」を模索することです。
多くの人は、『より大変な方法』で登っているために、結果的に苦労して、『登山=体力が全て』という誤解を生み出しているのだと思います。それは同時に、「登山は苦しいもの」「登山は楽しくない」という情報として共有され、多くの人を登山から遠ざけてしまっている原因なのかも知れません。