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LastUpdate 2016/04/28

須走ルート登山レポート

登山日
天候曇り時々雨
投稿者富士さんぽ管理人 37歳 男
人数単独
プラン日中日帰り
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富士さんぽ管理人による、須走口旧馬返~グランドキャニオン~小富士~須走口五合目の登山レポート。

幻の谷 グランドキャニオン

6月24日(日)、山開きを前に須走口のグランドキャニオンから、5合目を目指し、小富士、幻の滝と巡る計画を立てました。時間に余裕があれば、須走ルートを8合目ぐらいまで登って登山道の残雪状況を確かめるつもりでしたが、タイムアウトにより6合目までで降りてきました。なお、幻の滝を見るには時期が遅過ぎたようで、水流はすでに消え、そこからさらに1時間は登らないと見られないとのことで断念しています。

最初に書いておきますが、このルートはハイキングレベルとは言えません。ルートファインディングが出来る経験者向きです。「ルート何とかって何?」という人は、ガイドを雇いましょう。須走ルートであれば、5合目の東富士山荘で『やまぼうし』というガイド組織を紹介してくれますので、そちらにガイドを依頼してはいかが?

14:08須走口旧馬返し1合目17℃

相変わらず登山開始時間が遅く、悪いお手本となっている。このサイトの取材を兼ねているため、どうしても遅い時間になるのだが・・・

さて、この日も原付バイクで登って来たが、旧馬返し及び、グランドキャニオン入口には駐車場がない。であるからして、車の方は御殿場駅からハイキングバスに乗るか、5合目から下って来るしかない。と言っても5合目から下るにしても結構距離があるから、最初からタクシーなどを利用する計画を立てる必要があるだろう。

グランドキャニオン入口は、『馬返し』バス停から5分弱登ったところにある。石柱の手前ではなく、奥の方に斜めに道が伸びているので間違えないように。

しばらくは変哲の無い森の中の道が続く。しかし、この先はハイキングコースと呼べるしろものではない。登山地図でもルートが点線で示されている(ルートが不明瞭という意味)ことから分かるように、すぐにルートを見失う。否、ここには元々「辿るべきルート」などというものは無いのだろう(と思う)。

写真のように、どこへ向かえばいいのかさえも分からない、草の生い茂る中を進む。唯一の道しるべは、水の流れていない浅い谷。はじめは右側にあるのが見えるが、むしろ谷に降りて中を歩いた方がいい。やがて谷が埋まっていて高巻く必要が出てくるが、左岸(岸の左右は上流側から見るので、この場合は右側)に出て、つかず離れずの距離で歩くのが安全だ。
膝丈の笹が密生しているところは避けて回り込みながら徐々に高度を上げていくと、次第に谷が大きくなってくる。念のため書いておくが、大雨のときはこの谷に入らないように。濁流になることは無いにしても、用心に越したことは無い。

14:38赤テープの谷

登山口から多少右往左往しながらも徐々に高度を上げ、30分も過ぎたころ。谷に赤いテープが出てきたところで、岸を上がって北側に抜ける踏み跡を見つけた。谷はそのまま西に登っているが、わき道を辿ることにする。ほどなく、杭とロープが行く手を阻む。

『立入禁止』

その先は一気に斜面が下っているが、少しだけ偵察に赴く。10mも下ると大きく崩壊した谷間にぶつかる。さほど古くなさそうな崩壊の跡はむき出しの柔らかい土で、手がかり足がかりもない。私は迷うことなく引き返すことにした。
後に、この谷を突っ切った先にグランドキャニオンがあると聞いたが、この判断は間違っていなかったと確信している。なぜなら、一度降りたら登り返すことが出来なさそうであったから。

登山をしているとこのような決断を迫られる場面に出くわすことが多々あるが、登りであれ下りであれ、「ここを(安全に)戻ることが出来るか?」というのは大事な判断基準となることは忘れないでいただきたい。
くどいようだが、登山初心者、装備や体力の備えが不十分なものは、この先に進むべきではないと忠告しておく。(※今後、崩壊部分は整備修復されるかも知れませんが、いずれにしても5合目の東富士山荘などで事前に充分情報を得てからにするべきだと思います。)

先ほどの谷に戻り、上を目指す。比較的平坦であった両側も次第に険しく切り立ってきた。唯一、赤テープだけが正しいルートであることを示している。

いや、これは実際には予定していたルートではなかった。『山と高原地図』によるとグランドキャニオンを通って小富士へ登り詰めるルートが示されているが、このルートはふじあざみライン寄りの谷を抜けるルートになっている。車道が近く、車が通る音も聞こえるのでそこのことには気がついていたが、その時点ではグランドキャニオンに抜ける道も分からなかったので、そのまま赤テープを辿ることにしたのだ。

この「赤テープ」だが、富士山に限らず、およそ人の登る山ではこのように道に迷いそうなところに付けられていることが多い。一体誰が付けているのかというと、ほとんどは以前にこの道を通った登山者によるものである。童話『ヘンゼルとグレーテル』で、ヘンゼルが「白い小石」や「パンくず」を家に戻るときの目印としたように、登山道が明瞭でなかったり、分岐となっている場所に残されたものだ。

ただし、この赤テープも必ずしも正しいとは限らない。誰がどのような目的で残したのかが分からないからだ。山で赤テープを見つけたからといって盲目的に従ってはいけない。ちゃんと地図とコンパスで、あなた自身が目的とするルートの方向を示しているか、こまめに確認することが大切である。

では、私が辿った赤テープはどうかというと、写真にあるように小山町が平成23年6月に設置したものであることが分かる。どうも何かの調査のためらしいが、まっすぐ上に向かっていること、車道に近いことから大体の位置を把握出来ていることなどから不安なく赤テープに従って登った。

15:52黄色の杭

しかし、方向は間違っていないにしても高度的にどの辺りを登っているのかは良く分からない。途中、黄色い杭がある場所で時間を計ると、すでに1時間47分が経っていた。標準コースタイムでは、1時間45分で5合目~小富士の道に出るはずだが・・・

道はいよいよ険しく、大きく崩壊した斜面の脇を抜けるなどしつつ黙々と登る。時折、小雨がパラパラと落ちてくる音がするが、木々が深く覆いかぶさっていて、ここまで届くことは無い。
一度、赤テープを見失う場面もあったが、20mほどで気づき、道を戻ることで事なきを得た。ルートをロストしたら戻る。これも登山の鉄則である。

やがて、登山開始から2時間も過ぎようというころ、見えてきたものは意外なものであった・・・

山の奥深くで人工物を見るのは、不思議と違和感を覚えるものである。特に、人のあまり通わない場所では、一瞬背筋に冷たいものが走ることもある。写真にある白いベンチも目にしたときは最初何か分からなかった。周囲には建物の残骸が積み重なり、かつては休憩小屋であったのだろう。この先しばらく行くと『小富士山参道』と刻まれた石柱が立っていたことから、ここが旧登山道であったことが偲ばれる。

一合目(下)からの登山というと吉田ルート馬返からの道が良く知られるが、当然ながら他の登山道も5合目に自動車道が通じるまでは麓から歩いて登っていたのである。5合目から登っただけの経験で、「富士山は単調でつまらない」と言って憚らない人たちこそ、ぜひ麓から富士山に登っていただきたい。きっと富士山にも別の一面があることに気づくだろう。

16:22登山道分岐

参道を示す石柱を過ぎ、しばらく登ると整備された登山道に出た。須走口五合目から小富士に至る道である。ちょうど、5合目から5分ほどのところにある標識の下である。

ここまで、2時間14分。

16:22須走口五合目~小富士間分岐

グランドキャニオン入口から本来のルートよりふじあざみライン寄りの谷を須走口五合目から小富士に至る登山道へたどり着いた。ちょうど道標のあるところに出たが、写真右下に写り込んでいるように、この道はロープで塞がれている。下部は不明瞭で道迷いの危険性があるためだろうが、それなら最初から道標も置かなければいいのに、と思うのはおかしいだろうか?

ここから小富士までは15分。

ここまでの登りとはうって変わって歩きやすい道。

しばらく進むと、霧の中にケルン(石積み)が浮かび上がる。おぉ、小富士山頂か?と、思ったがさにあらず。山頂はその奥にあった。

16:39小富士山頂着14℃

山頂には小さな祠(ほこら)と標高を示す石柱。

生憎の天気で周囲は真っ白。

が、しばらく待つと忍野方面の雲が切れてきた。

16:50小富士山頂発

須走口五合目へ向かう。特に問題となる箇所もない。5合目から来ると順番が逆になるが、小富士への道の入口には写真のような石柱が立つ。

17:08須走口五合目着11℃

グランドキャニオン入口からちょうど3時間の行程。

この後、5合目で食事をとり、6合目の長田山荘まで登ったところで日没。砂走りへ抜けて5合目に降りる。帰りも同じ道を戻ろうと考えていたが、小富士遊歩道から件の分岐を少し下ってみると霧が深く、日も落ちていることから道迷いのリスクを考え断念。ふじあざみラインの車道を歩いて下ることに。

20:21須走口五合目発

途中から雨が降り出し、段々強くなる。驚いたことに、下から登ってくる人がいた。聞けば、仮眠を取って翌朝から登るという。アイゼンなど冬の装備で来たそうだから、冬山もやるような、かなりの経験者なのだろう。う~む、人のことは言えないが、物好きもいるものだ。ちなみに、この日の翌日の予報は雨・・・

21:26グランドキャニオン入口着

帰りの道は下までずっと視界数メートルの濃霧。ふじあざみラインは、霧が多いように思う。車で来られる方は、くれぐれもご注意を。早足で歩いたためか、標準コースタイム1時間25分のところを1時間5分で降りた。

余談だが、この下りの途中でオーバーグローブを落とした。バイクまで戻ってから気がつき、戻ることに。グローブは無事に見つかったが、相変わらずの迂闊。
さて、以前もプリンスルートで落し物を取りに戻った話を書いたが、単なる笑い話として書いているわけではない。登山は疲れや寝不足で集中力が鈍ることがある。そういうときにトラブルを起こしやすい。落し物ぐらいならまだいいが、事故など起こさないように反面教師としてあえて書いているのである。

おわり

登山データ
登り3時間
下り1時間5分
全行程7時間18分+α
装備特記ストックなし
※休憩に小休止、中休止は含まず。食事休憩などの大休止以外は、行動時間に当然含まれるものと当サイトでは看做しているため。※ウェスト=ウェストバッグ※装備特記は、通常装備とは別に今回用意したもの。
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