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LastUpdate 2016/12/29

富士山の天候判断

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富士山に限らず、天候の判断は登山において極めて重要な要素となります。準備もせずに登って、いざそのときになって慌てても遅いので、事前に知識を備えておきましょう。


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雨の登山

楽しいか楽しくないかで決めればいい

雨の中を無理して登っても、楽しくありませんよ。雨のち晴れの予報だったり、山小屋に宿泊して翌日の晴れに期待するとかで無い限り、別の日に延期するのが一番です。

ツアーを予約済みだったり、どうしても日程を変えられないとしても、キャンセル料を払ってでも中止にした方がいいでしょう。もしそれで予報が外れて後から晴れたと聞いても、「やっぱり行けばよかった」と悔しがることはありません。その時点での天候で中止を決めたあなたの判断は正しかったのですから。

Check Point!

降水確率と雨量

降水確率とは、時間あたり1mm以上の雨の降る確率のことで、雨量とは無関係です。つまり、降水確率10%より100%の方が大雨になるというわけではありません。

1mmの雨量とは?

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冷たい風が吹いたら雨が来る

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梅雨明けと梅雨の中休み

梅雨明けを待って

山開きを迎えても、7月の上旬はまだ梅雨の半ばです。天気が悪いときに登ってもしょうがないですし、危険でもあります。梅雨の晴れ間であれば登山出来ますが、富士山まで行ってみたら予想外に天候が悪かったり、夕立による雷雨の恐れがあるので、無理はしないでください。

関東甲信(山梨県)
梅雨入り梅雨明け
平年値6月8日ごろ7月21日ごろ
2011年5月27日ごろ7月9日ごろ
2012年6月9日ごろ7月25日ごろ
2013年6月10日ごろ7月6日ごろ
2014年6月4日ごろ7月22日ごろ
2015年6月8日ごろ
東海(静岡県)
梅雨入り梅雨明け
平年値6月8日ごろ7月21日ごろ
2011年5月22日ごろ7月8日ごろ
2012年6月8日ごろ7月23日ごろ
2013年5月28日ごろ7月7日ごろ
2014年6月5日ごろ7月21日ごろ
2015年6月8日ごろ
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風の怖さを知っておこう

富士山にいつ登るかを決めるのに、天気予報は重要な情報となります。しかし、「晴れていれば大丈夫」というものでもありません。晴れ、雨、だけでなく、風の強さにも注意を払ってください。

一般に、風速が1m/s強まるごとに体感温度は1℃下がると言われています。雨や汗で身体が濡れていると、風によってさらに体温が奪われ、低体温症により疲労凍死するなど生死に係わることがあります。これは、脅しではありません。

また、雨を伴わない天気であっても、強風に押されて岩場から足を踏み外したり、飛ばされて来た砂や小石が目に入るなども考えられます。

台風の前後は危険

台風の前後は特に風が強まりますので、一般に「台風一過は良く晴れる」とされていても、風が強いときは登山を避けるべきです。

風速による判断基準

では、どれくらいの風の強さが予想されるときには登山を諦めるべきか、そこが気になるところでしょう。

これは一概には言えませんが、台風の強風域は、15m/s以上の風が吹いている、もしくは吹く可能性がある地域。暴風域が、25m/s以上の風が吹いている、もしくは吹く可能性がある地域とされています。富士山では台風並みの風が吹くことは決して珍しいことではありませんが、さすがに台風の暴風域と同じ風速25m以上の風が予想されるときは、登山を中止する判断が必要でしょう。

また、富士山の登山道は谷筋を登る場面が多いので、思いのほか風を遮ってくれて無風に近いこともあります。ですが、山頂は風を遮る物が少ないので、山頂に出ると急に風が強く感じることがあります。身体を持っていかれそうになるほどの強い風が吹いているときは、山頂の火口壁の上を歩く『お鉢巡り』は諦めるべきでしょう。

実際に、風速25m/s以上ともなると、走行中のトラックが横転するほどの風の強さとされています。

電車の運転基準

なお、JRなど鉄道各社の運転基準として、風速が20m/s以上になると徐行など速度制限を行い、25m/sに達すると運行停止としているところが多いようです。なお、この基準とする数値は瞬間風速ですから、平均風速にするとおよそ10~13m/s以上で徐行、15~17m/s以上で運行停止といったところです。

Check Point!

風圧は、どれくらいの力が掛かるの?

天気予報で、風速何十メートルと聞いても、実際にどれほどの強さかは想像しにくいものです。

具体的に数字で表してみると、風速40m/sで1m²(1平方メートル)あたり100kgf(キログラムフォース)の力が掛かります。
人体の投影面積(シルエットの面積)は、中肉中背の成人男性で大よそ0.6~0.7m²となります。体格や姿勢、風が当たる向きなどで変わって来ますが、風速40m/sの風に吹き付けられると、60~70kgfの風圧を受けるということです。

風速40m/sというと、富士山の山頂でもめったに記録されない強さです。ですが、これは1時間当たりの風速の場合であって、瞬間風速では、時間当たりの風速の1.5~2倍(ときに3倍以上も)になることがあります。つまり、風速が20m/sと予測されるときに、40m/sの風が吹くことがあるのです。

富士山では、台風並みの風が吹くことは珍しくありません。台風並みの風とは風速15m/s以上なので、その2倍である最大瞬間風速30m/sが、台風が来ていない普通の日でも吹くことがあるのです。この風の強さは、30~40kgfの強さでドンと押されるようなものです。

風は、目で見ることも、予測することも出来ません。いつ来るか分からない突風を、予め予測して身構えることは出来ないのです。

あなたが岩場の上で、ふいに強い力で押されたら、落ちずに持ち堪えられる自信はありますか?私には、その自信はありません。ですので、強風が予想されるときには山に登らないようにしています。

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ビューフォート風力階級表

ビューフォート風力階級表とは、風の強さを客観的に表すために、観測される事象に対応する風速を割り出して階級に分け、表にまとめたものです。

風力
階級
推定風速(秒速)名称地表物の状態
00~0.2m/s平穏(へいおん)静穏。煙はまっすぐに昇る。
10.3~1.5m/s至軽風(しけいふう)風向きは煙がなびくのでわかるが、風見には感じない。
21.6~3.3m/s軽風(けいふう)顔に風を感じる。木の葉が動く。風見も動きだす。
33.4~5.4m/s軟風(なんぷう)木の葉や細かい小枝がたえず動く。軽い旗が開く。
45.5~7.9m/s和風(わふう)砂埃がたち、落ち葉や紙片が舞い上がる。小枝が動く。
58~10.7m/s疾風(しっぷう)葉のある灌木がゆれはじめる。池や沼の水面に波頭がたつ。
610.8~13.8m/s雄風(ゆうふう)大枝が動く。電線が鳴る。傘はさしにくい。
713.9~17.1m/s強風(きょうふう)樹木全体がゆれる。風に向かっては歩きにくい。
817.2~20.7m/s疾強風(しっきょうふう)小枝が折れる。風に向かっては歩けない。
920.8~24.4m/s大強風(だいきょうふう)屋根瓦が飛ぶ。人家にわずかの損害がおこる。
1024.5~28.4m/s全強風(ぜんきょうふう)陸地の内部ではめずらしい。樹木が根こそぎになる。人家に大損害がおこる。
1128.5~32.6m/s暴風(ぼうふう)めったに起こらない広い範囲の破壊を伴う。
1232.7m/s~颶風(ぐふう)被害が更に甚大になる。
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最大瞬間風速をFスケールから考える

F(藤田)スケールとは、竜巻の強さを建物などの被害状況から事後的に判断する指標です。もちろん、富士山で竜巻は発生しないでしょうが、最大瞬間風速から、その風がどれほど恐ろしいものかを感じて貰う事が出来ると思い、掲載しました。

一般に、瞬間風速は、平均風速/毎時の1.5倍から2倍(ときに3倍以上も)に達するとされています。これまで、日本において観測史上最大の風は富士山山頂で計測された91m/sであり、これを時速になおすと327.6km/hとなります。新幹線から顔を出したところを想像してみてください。小さな砂粒であっても、眼球を直撃すれば失明は免れないでしょう。この日本観測史上最大の風は、富士山山頂で1966年9月25日に記録されています。

富士山では、夏でも最大瞬間風速が33m/s(F1に相当)を超えることは決して珍しいことではなく、2004年8月まで観測されていた富士山山頂における風速の記録では、毎年7~9月の92日間の内、10日弱が平均して観測されています。
F2の竜巻に匹敵する強さの風としては、観測記録が残る最も新しいものとして、2003年8月9日に瞬間風速60.4m/s(217.44km/h)が観測されています。

ちなみに、風圧(風から受ける力)は風速の2乗となりますので、10m/sの風に対して、20m/sの風は2倍ではなく4倍、40m/sでは4倍ではなく16倍になります。

スケール風速(秒速)地表物の状態
F017~32m/sテレビのアンテナなどの弱い構造物が倒れる。小枝が折れ、根の浅い木が傾くことがある。非住家が壊れるかもしれない。
F133~49m/s屋根瓦が飛び、ガラス窓が割れる。ビニールハウスの被害甚大。根の弱い木は倒れ、強い木は幹が折れたりする。走っている自動車が横風を受けると、道から吹き落とされる。
F250~69m/s住家の屋根がはぎとられ、弱い非住家は倒壊する。大木が倒れたり、ねじ切られる。自動車が道から吹き飛ばされ、汽車が脱線することがある。
F370~92m/s壁が押し倒され住家が倒壊する。非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる。汽車は転覆し、自動車はもち上げられて飛ばされる。森林の大木でも、大半折れるか倒れるかし、引き抜かれることもある。
F493~116m/s住家がバラバラになって辺りに飛散し、弱い非住家は跡形なく吹き飛ばされてしまう。鉄骨づくりでもペシャンコ。列車が吹き飛ばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する。1トン以上ある物体が降ってきて、危険この上もない。
F5117~142m/s住家は跡形もなく吹き飛ばされるし、立木の皮がはぎとられてしまったりする。自動車、列車などがもち上げられて飛行し、とんでもないところまで飛ばされる。数トンもある物体がどこからともなく降ってくる。
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