ルート全体
登山道は、山小屋の前など平らな場所が多く有ります。そのために、平均値である以下の数値よりも実際は傾斜がキツイことに留意してください。
登山とは、いわば傾斜のついた道を登ることに他なりません。その傾斜がどれくらいなのかを知っておくことも大切です。
このページでは、各登山道の傾斜度を調べた結果を報告します。しかし、ただ数値を見ただけでは、「へー、そうなんだ」ぐらいで役に立つ情報ではないと思えるかもしれません。これらの情報を生かすには、それぞれを見比べる必要があります。例えば、どの登山道は、他のルートと比べて傾斜が急であるとか、あるいは他の山の登山道の勾配を調べて、富士登山の事前練習の目安にするなどです。
地理院地図
地理院地図のサイトを使えば、地図上のルートをトレースすることで登山道の距離を測り、勾配を割り出すことも可能です。
但し、登山道は一度作られたらずっと変わらないように思われますが、実際には崖崩れなどによってルートが変えられることも少なくありません。舗装道路と違って登山道は実地の測量ではなく、空中写真を基にした航空測量で作られているようです*。つまり、厳密に正確な数値は求め得ないですし、頻繁に更新が行われているわけでもありません。それでも、多少の違いは登山に影響ありませんので、参考程度に考えておけばいいでしょう。
*(一部GPS(グローバル・ポジショニング・システム=衛星を利用した全地球測位網)や航空レーザを利用した測量も行われています。)
カシミール3D
より簡単に登山道の距離を測りたい方は、『カシミール3D』というソフトウェアがあるので試してみてはいかがでしょうか。ちなみに、私はこのソフトを使ったことが無いので評価や説明は出来ません。詳しくは以下のサイトでご確認ください。
標高差だけが難易度の目安ではない
では、実際に各ルートを比べてみましょう。
下の表で、まず勾配から見比べてみてください。富士宮ルートだけが30%台になっており、四つのルートの中で飛び抜けて急なことが分かると思います。
次に、斜面を直登(ちょくとう)した場合の角度を比べてみてください。富士宮ルートが急なのは変わりませんが、吉田口六合目からの角度と比べても、ほとんど差がありませんね。
これが何を意味するかと言うと、吉田口六合目(2,390m)と富士宮口五合目(2,380m)の標高がほぼ同じでありながら、吉田ルートは富士宮ルートに比べて九十九折で登っていく場面が多いため、登山道の長さは吉田ルートの方が長くなっています。このことにより、山頂までの標高差は同じぐらいでも、距離の短い富士宮ルートの方が勾配はキツくなるのです。
つまり、5合目からのルート全体で見れば富士宮ルートが山頂までの標高差が小さいので一見楽なように思えますが、標高差の比率以上に登山道の距離も短くなり、その分勾配がキツくなるため、必ずしも登るのに楽なルートでは無いということです。但し、ルート全体としての傾向(平均値)と局所的な傾斜角度はまた別なので、他のルートでも岩場などで一部急傾斜が存在することに注意が必要です。
ルート全体
登山道は、山小屋の前など平らな場所が多く有ります。そのために、平均値である以下の数値よりも実際は傾斜がキツイことに留意してください。
吉田ルート | 須走ルート | 御殿場ルート | 富士宮ルート | |
---|---|---|---|---|
5合目~山頂 | ||||
5合目標高 | 2,305m | 1,960m | 1,440m | 2,380m |
山頂までの累積標高差 | +1,446m | 1,746m | 2,266m | 1,332m |
山頂までの距離 | 6.3km | 7.7km | 10.5km | 4.3km |
勾配 | 23.6% | 23.3% | 22.1% | 32.6% |
平均傾斜角度 | 13.2° | 13.6° | 12.3° | 18.2° |
6合目~山頂 | ||||
6合目標高 | 2,390m | |||
山頂までの標高差 | 1,316m | |||
山頂までの距離 | 5.2km | |||
勾配 | 26.2% | |||
平均傾斜角度 | 14.4° | |||
※吉田ルートは、富士スバルライン五合目から吉田口六合目まで比較的なだらかな水平移動で獲得標高が少ないことから別途6合目からも計算。 |
8合目から
一般的に、山は裾野ではなだらかで、山頂に近づくほど傾斜が急になります。富士山では、8合目から特に傾斜がキツくなると言われています。
吉田・須走ルート | 御殿場ルート | 富士宮ルート | |
---|---|---|---|
8合目から山頂* | |||
終点標高 | 3,710m | 3,700m | 3,710m |
起点標高 | 3,370m | 3,300m | 3,230m |
標高差 | 340m | 400m | 480m |
距離 | 1,120m | 1,265m | 1,272m |
勾配 | 31.8% | 33.3% | 40.7% |
平均傾斜角度 | 17.4° | 18.3° | 22.1° |
※距離は地理院地図を使用し管理人が計測。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。*吉田・須走ルートは、本8合目から。御殿場ルートは、7合9勺から。 |
剣ヶ峰馬の背
富士山山頂の最高地点である剣ヶ峰へ南側から登る斜面は『馬の背』と呼ばれています。
馬の背は、その名の通り峰の左右両側が切れ落ちて崖のようになっていますが、登山路のある斜面自体がとても急傾斜で、尚且つ固い岩盤の上に砂が載った、とても滑りやすい斜面です。距離は短いですが、登るときよりも下るときの方が転倒しやすいので特に気をつけてください。
剣ヶ峰馬の背 | |
---|---|
終点標高 | 3,770m |
起点標高 | 3,730m |
標高差 | 40m |
距離 | 105m |
勾配 | 41.2% |
平均傾斜角度 | 22.2° |
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。 |
宝永山
宝永火口底から宝永山馬の背に登る斜面は、ザクザクとした砂の急傾斜で滑りやすく、難所のひとつとなっています。
宝永山 | |
---|---|
終点標高 | 2,720m |
起点標高 | 2,440m |
標高差 | 280m |
距離 | 816m |
勾配 | 36.6% |
平均傾斜角度 | 20.4° |
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。 |
二ッ塚(双子山)
二ッ塚(双子山)は、御殿場口新五合目から行けるハイキングルートのピークですが、ほとんど砂の山というような滑りやすい急斜面です。特に上塚は標高差も大きく、一度登り始めたら休めるような状況にないので、一気に登りきらないといけない体力勝負の山です。
宝永山 | ||
---|---|---|
下塚 | 上塚 | |
終点標高 | 1,800m | 1,920m |
起点標高 | 1,780m | 1,780m |
標高差 | 20m | 140m |
距離 | 101m | 396m |
勾配 | 22.2% | 37.8% |
平均傾斜角度 | 11.3° | 20.4° |
※距離・勾配・傾斜角は地理院地図を使用し管理人が計測、計算。但し、切れのいいところである等高線上を起点終点とした。 |
剣ヶ峰馬の背
岩場は基本的に直登するので、傾斜角30°以上の斜面を登ることも珍しくありません。また、積雪期に登る場合は、夏道が雪で埋まっているために直登します。
冬の富士山は、『氷の滑り台』と形容されるように、一度足を滑らせたら、岩に激突するまで止まりません。
吉田ルート | 須走ルート | 御殿場ルート | 富士宮ルート | |
---|---|---|---|---|
5合目~山頂 | ||||
山頂標高 | 3,710m | 3,710m | 3,710m | 3,710m |
5合目標高 | 2,390m* | 1,960m | 1,440m | 2,380m |
山頂までの標高差 | 1,320m* | 1,750m | 2,270m | 1,330m |
山頂までの水平距離 | 2.55km* | 4.12km | 6.28km | 2.53km |
平均傾斜角度 | 27.2°* | 23.0° | 19.5° | 27.4° |
9合目~山頂 | ||||
9合目標高 | 3,560m | 3,300m* | 3,400m | |
山頂までの標高差 | 150m | 410m* | 312m | |
山頂までの水平距離 | 0.25km | 0.8km* | 0.59km | |
平均傾斜角度 | 30.6° | 27.9°* | 27.5° | |
※標高は地理院地図を参考にしており、10m未満は切り下げています。*吉田ルートは、富士スバルライン五合目から吉田口六合目まで比較的なだらかな水平移動で獲得標高が少ないことから6合目からの計算としています。*御殿場ルートは、7合9勺から山頂まで |